2003あったか・えっせい「ふれあいステージ舞台」「私の感動体験記」(最優秀賞作品)
ベルブードワァ 北千住ルミネ店 大森 由紀子
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私が販売という職業に携わって、早や六年が経とうとしています。
「人」をお相手する職業なだけに、この六年間の中でも数え切れない位の出逢いや体験をさせて頂きました。その中で、つい半年程前の忘れられない出来事を書かせて頂きます。

 ある日のこと。赤羽警察からお店に電話がありました。話を聞くと「赤羽駅近くのコンビニエンスストアで万引き犯を捕まえたのですが、その人の持ち物の中にそちらのタグが付いている商品があるので引き取りに来て頂きたい」との事でした。引き取りに行き、事情を伺うと、精神科に通院されている若い女性とのことでした。

 大変にショックでした。

一つは、その商品(アクセサリー)が無くなっていた事に気付かなかったこと。
もう一つは、お客様に対し、そういう環境を作ってしまったことです。すぐにお店に戻り店スタッフ全員にそのことを伝え反省致しました。

 その夜、そのお客様のお母様からお詫びの電話がありました。お詫びとともにその商品を買い取らせて欲しいとおっしゃいました。しかし、私達の仕事はお客様がお気に召して頂いたものをお売りする仕事です。思わずお客様にこう問いかけてしまいました。「そのアクセサリーはお気に召して頂けましたか?もしそうでないのであれば、そういう環境をつくってしまった私どもの責任なのですから、どうぞ気になさらないで下さい。」

 しかもお嬢様の年令からすると、お母様は私の母と同年代のはずです。そう思うとたまらなくなり、「お母様もご苦労が絶えないでしょうが、どうぞお身体にはくれぐれもお気を付けて。」と言わずにはいられませんでした。

 数日後のことです。私がお休みの日に、何と、そのお母様とお嬢様がご来店されたのです。担当したスタッフが私が休みという事を伝えると「店長さんにお手紙を書きたいのですが、書く物を貸して頂けますか?」とおっしゃり、更にお二人で店内をご覧頂き、セーターを二点お買い上げ下さったのです。翌日私が出勤すると「先日は本当にありがとうございました。今日は本当に自分の気に入ったものを探しに来ました。このセーター、とっても可愛いですね。又、来ます。」という内容のお手紙が残されていました。びっくりもしましたが、本当に嬉しかったです。こんな事の後で普通ならお店に来づらいはずなのに、しかもお買物までして下さるなんて…。

 お店が引き起こした事は、本当に申し訳ないのですが、こういう形でもお客様に自分の気持ちが伝わった事を実感致しました。又、お客様だけでなく、この出来事を強く共感してくれた店スタッフにも感謝致します。