2005あったか・えっせい 「パワーアップ」(優秀賞作品)
ルクール・ベルブードワァ 青葉台東急スクエア店 古鍜冶 美和
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ある夏の日、買物カートを引いた年配の女性がお店に入店されました。セール中で少し混み合っていた事もあり、私は「いらっしゃいませ。」と笑顔で言い、どういう目的のお客様かなと思いながらも、すぐには接客につきませんでした。

 しかし、そのお客様は熱心に店内をご覧になってらしたので、「何かお探しですか」と声を掛けました。その方はクルッこちらを向いて「私、かわいいお店を見るのが好きなの。このお店ステキね。」とおっしゃいました。私は「そういう風に見て下さってたんだ」と、とても嬉しくなり「有難うございます!ぜひゆっくりご覧になって下さいね。」と言いました。ところがその後「若い方のお店かしら。私なんかが着たらおかしいわよね・・・。」とおっしゃるのです!!私はすぐに、うちのお店は60代の顧客様もいらっしゃいますし気になさらなくても大丈夫ですよとお伝えしたのですが「でも・・・。」とまだ少し抵抗があるご様子でした。よくよく伺ってみると体型にもコンプレックスがあるとの事。確かに大柄でいらっしゃるので一瞬おサイズがどうかなと思ったのですが、せっかく好きと言って下さって着たいという気持ちもお持ちなのに、試す前から諦めるなんてもったいない!と思い直し、じっくりお話を伺い、お好みのものでサイズの問題が無い商品を一緒にお探ししたいとお伝えしたところ、そこまで言うならとまた見て頂ける事になりました。

 ここからが販売員としての腕の見せどころです。体型カバーを考慮しつつ、お好きな雰囲気、お似合いになりそうな型・色など思いめぐらせ、3パターンのコーディネイトをした所、1つのコーディネートに手が伸びました。「これなら着れるかしら!」それは3パターンの中でも一番地味目なコーディネートでした。ところが、お客様はその地味コーデにかごバックをつけ足したのです。「さっきから気になってたの。あなたに合わせてもらったお洋服にピッタリ☆」とおっしゃり、ご試着頂きバッグを合わせた所、とても良くお似合いになって、鏡の前ではつらつとしていらっしゃるお客様を見て嬉しくなり、お客様もとても気に入って下さって、2人で盛り上がりました。

 色々とお買い上げ頂いたのでお荷物が大きくなってしまい、ご自宅まで郵送する事になりました。私はそこに、色々とお話が聞けて楽しかった事、私がお勧めしたものを気に入って頂けて嬉しかった事、沢山の有難うございましたの気持ちを、その方が帰られてすぐの熱い心のままカードにし、包みを開けられてパッと目に飛び込んでくる位置に添え、驚いたり喜んだりして下さっているお客様のお顔を想像しながら、心を込めて包装しました。

 後日、そのお客様が再来店して下さり、メッセージカードがあるなんて思いもしなかったのでびっくりしたがとても嬉しかったと言いに来て下さったと別のスタッフから聞いた時、嬉しくて涙が出そうになりました。私はお客様に心から喜んで頂けるようにとお客様のために行動しました。お客様は嬉しかったと伝えるためにわざわざ私のために来て下さった、私の気持ちとお客様の心が通い合ったと確信しました。

 人のために何かをする・できる喜びを知った私は、人として社会人として販売員としてパワーアップした気がします。これからも、心を込めた仕事でお客様のため、自分のため、周りの人のために成長していきたいと思ってます。